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■╋■╋ スポットライト・コラム
╋■╋ ― 映画作品と原作の設定の相違も判る
■╋ 『日本映画原作事典』
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今年2月13日、市川崑監督が亡くなりました。
享年92歳は大往生とも言えそうで、「映画は天職」という口ぐせには、
ちょっと羨ましささえ感じてしまいます。
市川監督は、巨匠でありながら様々な表現に挑戦していましたが、文
芸作品には特に定評がありました。代表作として「ビルマの竪琴」「野
火」「こころ」「おはん」などが挙げられますが、これらの作品は、
それぞれの原作がまたすばらしい名著でもあります。
市川監督の訃報を機会に映画を鑑賞した後は、原作となった文学作品
にも触れたくなるかもしれません。
そうした際に、映画作品名からその原作を調べることができるのが、
「日本映画原作事典」です。映画作品6000本の基本情報と原作名、原
作の図書情報を得ることができます。
映画タイトルと原作名が同じものは、図書情報にも比較的楽に行き着
くことができますが、映画化にあたってタイトルを原作名と違えてい
るものも数多くあります。
市川監督の作品で言えば次のようなものです。
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「炎上」 ←三島由紀夫「金閣寺」
「どら平太」 ←山本周五郎「町奉行日記」
「幸福」 ←エド・マクベイン「クレアが死んでいる」
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本書ではこのような作品名の違いも一目で見てとることができますし、
巻末には「原作名索引」を付与していますので、原作名から映画タイ
トルを調べることもできます。
市川監督の長編の遺作となった「犬神家の一族」を引くと、映画の解
説、原作の内容の両方を読むことができます。
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【映画の解説】
76年に製作され大ヒットした横溝正史原作ミステリーを、豪華キャス
トを迎え市川崑監督自らが再びメガフォンをとり完全リメイク。金田
一耕助役はオリジナル版と同じく石坂浩二が演じる。信州の犬神財閥
の創始者・犬神佐兵衛が永眠した。佐兵衛には腹違いの3人の娘、松子、
竹子、梅子がおり、それぞれに佐清、佐武、佐智という息子がいた。
しかし、公開された遺言状には、3人の孫のいずれかとの結婚を条件に、
遺産すべてを佐兵衛の恩人の孫娘・野々宮珠世に譲渡する、と記され
ていた。やがて、遺産を巡って凄惨な殺人事件が発生、名探偵・金田
一耕助が事件の解決に乗り出すが…。
【原作の解説】
犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛が残した遺書。それによると、遺産は
諏訪神社の神主・野々宮大弐の孫娘・珠世が、三人の孫(佐清、佐武、
佐智)のうちから婿に選んだものに与えるという…。莫大な遺産を巡
り激しく憎みあう犬神家の人々。そしてこれは、次々と起こる惨劇の
幕開けに過ぎなかった。
犬神家の家宝「斧・琴・菊」と関係づけられた凄惨な連続殺人の数々
に金田一耕助が挑む…。テレビで映画で、常に大ヒットとなった話題
のオリジナル作品。
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この映画の場合は設定があまり変更されていないことが判りますが、
市川監督と"四騎の会"を結成した黒澤明監督の「椿三十郎」の解説を
読むと映画と原作の設定の相違があることが感じられ、そうした点で
も興味深い読み物になっています。(こちらの方は、実際の本でご覧
下さい!)
映画を見てから読むか、原作を読んでから見るか。
迷ったときにはぜひ、本書を手にとってみてください。
(編集部・松本)
◆ 『日本映画原作事典』
スティングレイ・日外アソシエーツ〔共編〕
定価 12,600円(税込) A5・850p 2007年11月刊
ISBN:978-4-8169-2074-5
http://www.nichigai.co.jp/sales/2074-5.html