2010年2月27日未明、チリ中部でM8.8の大地震が発生しました。これは
観測史上、5番目の規模だそうです。NASA の分析によると、地軸の傾き
が約8センチずれたとのこと。もの凄いエネルギーです。死者は800人を
突破し、500人以上が沿岸部で津波の被害を受けたようです。日本でも
津波の影響が懸念されましたが、幸いなことに一部を除き、大きな被害
はありませんでした。
20世紀で最も大きかったのは、1960年5月22日に起きたM9.5のチリ地震
です。この地震による津波が日本でも大きな被害をもたらしました。小
社『地震・噴火災害全史』によると、北海道、三陸海岸を中心に死者・
行方不明者142人、負傷者873人、家屋全半壊3,754棟、家屋流出1,259棟、
船舶被害2,273隻という大災害だったそうです。
「津波被害の特徴」の項には、以下のような生々しい描写があります。
> 最大波高5.8mを記録した八戸港では早朝3時過ぎから夕方までに10波
> が押し寄せ、中でも午前6時頃には押し寄せた数波の津波は湾奥にあ
> る街を呑み込んだ途端、あらゆるものを巻き込みながら海岸線から
> 300mも潮が引き、通常の3倍の広さの浜が姿を表したと思うと、次の
> 津波が押し寄せて建物や船舶を破壊し、引き潮がその残骸を海中に
> 引きずり込んでいった。……この津波の惨状について罹災者は押し
> 寄せる波よりもあらゆるものを急速に海中にひきずり込む引き波の
> 方が破壊力があったと証言している。
(pp.66-67より抜粋)
津波被害の要因として、(1) 住民が就寝中の早朝であったこと、(2)
体感地震ではないチリ地震の津波が日本まで到来するとは予測し得な
かったこと、(3) 第一波が過ぎて警戒を解いた後の第二波以降の津波
が大きかったこと、(4) 津波警報の発令が遅れたこと、が挙げられて
います。
この50年前のチリ地震を教訓に環太平洋諸国では津波早期警戒システ
ムが確立され、地震、津波情報の共有化が図られることとなったそう
です。
が、今回の大地震でもチリ軍による津波警戒警報の発令が遅れたとの
こと。寺田寅彦の「天災は忘れた頃に来る」という警句が頭をよぎり
ます。
「地震・噴火災害全史」
災害情報センター,日外アソシエーツ〔共編〕
A5・390p 2008.2刊 定価9,800円(本体9,333円)
ISBN:978-4-8169-2089-9
http://www.nichigai.co.jp/cgi-bin/nga_search.cgi?KIND=BOOK2&ID=A2089
(竹)