今月は、日外アソシエーツの既刊書より、東洋学園大学の三谷康之教授
のライフワーク「英文学の背景を知る」事典シリーズ3点をセレクトし
ました。その中から『イギリス「窓」事典』をピックアップしてご紹介
しましょう。
window の語源は、古期スカンディナヴィア語の vindauga に由来する
そうです。これは wind(風)を意味する vindr と eye(目)を表す
auga の合成語。元々、通風や採光のために屋根や壁面に開けた穴を指
し、そこから室内に風が吹き込むので wind-eye と呼ばれたそうです。
本書は、風土や習慣の違いから馴染みのない異文化の一つとして「窓」
を取り上げ、イギリスの窓について、建築学的意義に触れつつその文化
史を詳説した事典です。数多くの写真やイラストを添えた上で、詩・童
謡・童話・小説・戯曲・エッセイ・紀行文など実際の文学作品からの引
用で構成されています。紹介した窓の種類は40点を越え、その名称は
330点、窓の周辺用語は360点余りに及びます。補遺として「部屋の間取
りと窓」「窓にまつわる習慣と表現」なども収録されています。
窓は多種多様で、その周辺用語は多岐にわたります。様々な形で文学作
品にも登場しますが、英和辞典はもとより英英辞典にさえ掲載されてい
ないものも少なくないとのこと。blind window(盲目窓)、bull's-eye
glass window(牛の目窓)、chimney window(暖炉窓)など、単語の意
味から形状を推し量ることが困難なものもあります。
興味深いのは、1696~1851年まで Window Tax(窓税)があったこと。
エリザベス朝時代、ガラスは大変高価な贅沢品で、税金の対象になった
そうです。当初、窓が六つまでは無税、それ以上が課税されました。課
税対象は家屋の所有者ではなく、その居住者であり、中流階級には荷の
重い措置だったようです。税を払えない者は窓を塞いで blind window
にする例もあったといいます。
たかが窓、されど窓。窓を通して異文化の輪郭がみえてきます。本書が
イギリス文学のみならず、その文化全般を理解するための背景的知識と
して、文字通り“wind-eye”になれば幸いです。
『イギリス紅茶事典―文学にみる食文化』定価6,930円(税込)
http://www.reference-club.com/fs/nichigai/gr7/gd159
『事典・イギリスの橋―英文学の背景としての橋と文化』
定価6,930円(税込)
http://www.reference-club.com/fs/nichigai/gr7/gd160
『イギリス「窓」事典―文学にみる窓文化』定価9,600円(税込)
http://www.reference-club.com/fs/nichigai/gr7/gd158
(ネット販促課・竹村)
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