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<特集>日外アソシエーツ 新刊を斬る!
-作家の履歴書-
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好きな作家の小説を文庫本で読むとその単行本を、単行本で読むと
その初出誌を確かめたくなることがあります。
大抵は書籍の奥付の前のページあたりに
"本書は「月刊○○」○年○月号から○年○月号の連載を単行本化し
たものです。"
などと書いてあって、原典に辿り着くのは意外と簡単です。
といっても、原典が何かを調べるために、いちいち単行本を引っ張
り出すのはめんどうくさいものです。
ましてや、勉学のために作家研究などを手がける場合は、作品の初
出にあたることは大変重要になってきます。
ところが、国立国会図書館の「雑誌記事索引」では創作・小説の類
が採録対象になっていないこともあり、「文藝年鑑」のバックナン
バーを丹念に拾い読んでいくのが、小説の初出誌調べの方法だとい
います。
さて、本書『文芸雑誌小説初出総覧 1945-1980』は小説の初出誌調
べの一助となることを目的としたツールで、戦後36年間に刊行された
文芸誌・小説誌・総合誌、一部の同人誌・PR誌など131誌10,293冊に
掲載された、現代作家3,711人の小説・戯曲59,270点を網羅したもの
です。
新聞に連載された小説についてまとめたものに『新聞小説史年表
新装版』(高木健夫編 1996年 国書刊行会)というのがあります
が、それの文芸誌版に近いといえばお分かりいただけるでしょうか。
調べものに使わなくても、好きな作家名の下に時系列に並んだ作品
名を眺めているだけで、色々と発見があります。例えば、今年、
深田恭子主演でドラマ化された筒井康隆の『富豪刑事』は「小説新
潮」1975年8月号に初めて掲載されて、翌年からシリーズ連載化され
ていることがわかります。
しかし、本書は紙幅の関係で週刊誌が採録対象になっていないこと
や、作品名から引ける索引が付いていないこと、また収録期間が
1980年までなので最近の作家については調べられないことなどは残
念な一面です。別企画、続編に期待しましょう。
(袴田)
◆『文芸雑誌小説初出総覧 1945-1980』勝又浩監修 2005.7刊
定価49,350円(本体47,000円) B5・1296p ISBN4-8169-1935-X
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