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■╋■╋ スポットライト・コラム
╋■╋ ― 図書館の発展に尽くした人物の本格的な評伝集
■╋ 『図書館人物伝―図書館を育てた20人の功績と生涯』
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本書は、図書館史の人物評伝集です。日本篇・外国篇各10人、計20人
の評伝が収録されています。
日本図書館文化史研究会の創立25周年記念として編集された論文集で
もあります。
では、どのような人物をとりあげているのでしょうか。
巻頭の「被伝者の光と影」で研究会代表の阪田蓉子先生は「研究者で
あったとか,著作物があるとか,あるいは大規模な図書館の長として
活躍していた人物には,当人に関る資料,情報が多くある,このよう
な人たちに比べ,図書館の実務畑で,地道に仕事をしていた人物に関
する情報が残されている例が少な」い、と述べておられます。
図書館サービスは、実際の業務を支えた人々の貢献があってこそ、発
展してきました。本書にとりあげられているのは、そうした図書館史
の貢献者です。
人物の顔ぶれを見てみましょう。
〔日本編〕
佐野友三郎 (1864-1920) 県立秋田図書館長時代の事績をたどる
乗杉嘉壽 (1878-1947) 図書館員教習所設立に尽力
松本喜一 (1881-1945) 帝国図書館長・日本図書館協会理事長
森清 (1906-1990) 図書館に導いた間宮との交流をたどる
大西伍一 (1898-1992) 府中市立図書館初代館長
村上清造 (1901-1987) 富山県の図書館発展に尽力
叶沢清介 (1906-2000) 県立長野図書館でPTA母親文庫を創始
湯浅吉郎 (1858-1943) 府立京都図書館長の事績を再評価
志智嘉九郎 (1909-1995) レファレンスサービスを推進
島尾敏雄 (1917-1986) 鹿児島県立図書館奄美分館長
〔外国編〕
ヴァルター・ホーフマン (1879-1952) ドイツ公共図書館論を提唱
リリアン H.スミス (1887-1983) 米トロント市の児童図書館員
ジョン・S.ビリングス (1838-1913) ニューヨーク公共図書館長
ジョン・C.デイナ (1856-1929) 米ニューアーク公共図書館長
メアリー・レミスト・ティッコム (1857-1932) 馬車図書館を創始
ピアス・バトラー (1884-1953) シカゴ大学で研究・教育
キーニー (1891-1962) 戦後日本の図書館再建構想を示す
ジェシー・H・シェラ (1903-1982) 米図書館界人物事典を編集
セーチェーニ F. (1754-1820) ハンガリー初の公共図書館の設立者
H.E.アニュアール (1928-1988) シンガポール国立図書館長
各人物について、図書館史の気鋭の研究者が一次資料にあたり、読み
解き、時間をかけて執筆されています。現在では当然のような制度や
サービスが、どのような人たちによって創られ、普及していったのか
を、各評伝から読み取ることができます。
このコラムをご覧の方は、レファレンスなどの図書館業務に携わって
おられる方が多いと思います。図書館を支えるスタッフ、図書館サー
ビスのあり方は、変貌しつつあります。このような時こそ、「先人の
業績を知り,その成果を学ぶという姿勢が今こそ必要ではないか」
(「志智嘉九郎の業績について」p187より)と考えます。
本書で、図書館の歴史を築いた先人たちの業績を繙いてみてはいかが
でしょうか。
(編集部・城谷)
◆ 『図書館人物伝―図書館を育てた20人の功績と生涯』
(日外選書Fontana) 日本図書館文化史研究会[編]
定価 4,800円(税込) A5・470p 2007年9月刊
http://www.nichigai.co.jp/sales/tosyokanjinbutsu.html